前回までは障害福祉サービス①・②を解説してきました。
今回で最後だよね。よろしくお願いします!
それじゃあ第三部いきま~す。
今回は、重度障害者等包括支援を解説していきます。
※3部構成になっています。他記事もぜひご覧ください。
- 介護業界20年、現役の居宅介護事業所管理者兼相談支援専門員が執筆。
- 持っている資格:介護福祉士、ケアマネージャー、相談支援専門
- 年収:ざっくり520万円
それでは早速、本文へGO!
重度障害者等包括支援とは?
重度障害者等包括支援とは、常時介護が必要な方の中でも特に介護の必要性が高い方を対象に、10種類のサービスを組み合わせて包括的に支援するサービスです。
- 居宅介護(身体介護・家事援助・通院等介助)
- 重度訪問介護
- 同行援護
- 行動援護
- 生活介護
- 短期入所
- 自立訓練
- 就労移行支援
- 就労継続支援
- 共同生活援助
これらのサービスを組み合わせて、包括的に支援を行います。
では、このようなサービスはどのような方が利用できるのでしょうか?
重度障害者等包括支援を利用できる対象者
重度障害者等包括支援の対象者は、常時介護を要する方で、「意思疎通を図ることに著しい支障がある方のうち、四肢の麻痺や寝たきりの状態にある方、知的障害または精神障害により行動上著しい困難を有する方」です。
具体的には、次の通りです。
障害支援区分6であって、意思疎通を図ることに著しい支障がある者であって、下記のいずれかに該当する者
ちょ、ちょっと分かりにくいんですけど…
もう少しわかりやすく説明するとこんな感じかな。
- 障害支援区分6であって、意思疎通を図ることに著しい支障があるものであって、以下のいずれかに該当する方。
- 重度訪問介護の対象であって、四肢すべてに麻痺等があり、寝たきり状態にある障害者のうち、以下のいずれかに該当する方。
Ⅰ類型 | 人工呼吸による呼吸管理を行っている身体障害者(筋ジストロフィー、ALS、脊椎損傷、遷延性意識障害) |
Ⅱ類型 | 最重度知的障害者(重症心身障害者等) |
Ⅲ類型 | 障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上である方。(強度行動障害) |
続いて、重度障害者等包括支援を実施するための要件を解説します。
重度障害者等包括支援の資格要件と人員配置
重度障害者等包括支援を行うために必要な資格と人員配置は、次の通りです。
人員配置 | 資格要件 |
---|---|
サービス提供責任者(1人以上) | 重度障害者等包括支援対象者の直接処遇に3年以上従事した者で相談支援専門員の資格を有する者 |
ヘルパー | 必要なし |
つまり、上記の要件を満たしたサービス提供責任者が1人以上いればヘルパーの資格は問われないということです。
しかし実際のところ、重度の障害がある方へのサービスを行うため重度障害者等包括支援計画に定められた支援を適切に遂行する能力を有する者である必要があります。
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重度障害者等包括支援を利用している方の生活
しかしながら、実際に重度障害者等包括支援を利用している方は全国で約30人です。
行っている事業所は13都道府県に20事業所と、かなり少ないのが特徴です。
それだけ、本当に重い障害のある方しか利用できないんだね。
筆者が勤務している県内でも行っている事業所はなく、対象者は今のところ顕在化されていません。
そこで、実際に重度障害者等包括支援を行っている事業所さんのHPで次のような記事を見つけました。
ここで登場する人物のひとりは、自閉症スペクトラム障害と重度の知的障害がある方。
その特性から、睡眠障害やコミュニケーション障害があります。
気持ちが伝わらないがために、部屋の扉や壁を蹴ったりします。
こういった行動は、行動障害といわれることがほとんどです。
しかし上の記事では、行動障害という捉え方ではなく、特性として、また本人の気持ちに寄り添った表現をしています。
筆者の地域でもこのような方はいますが、家族のみで介護にあたるか入所施設で暮らしている方ばかりです。
重度障害者等包括支援は、そういった重い障害がある方でも、自分らしく地域で暮らすためにサポートを受けられる制度です。
しかし社会資源の不足や、重たい障害の方に対する充分な知識や支援技術が伴っていないため支援ができない現状があります。
障害の特性を理解した上で本人の気持ちに寄り添うことが大切なんだね。
支援の難しさから、なかなか家族からSOSが出しにくく顕在化されないケースが数多くあるのが問題のひとつとなっています。
障害福祉サービス(訪問系)の総まとめ
これまで3回に渡り障害福祉サービス(訪問系)のサービスを解説してきたけど、どうだった?
とてもよく分かったよ!ありがとう!
最後にもう一度簡単にまとめます。
サービスの種類 | サービス内容 |
---|---|
身体介護 | 身体に直接触れて行う介護 |
家事援助 | 日常生活に支障が生じないように行う家事全般 |
通院等介助 | 病院への通院等のための移動介助又は官公署での公的手続若しくは障害者総合支援法に基づくサービ スを受けるための相談に係る移動介助 |
重度訪問介護 | 常時介護を要する方に総合的に行う身体介護・家事援助・相談支援等・移動介護 |
同行援護 | 視覚障害により移動に著しい困難がある方の外出の介助 |
行動援護 | 自己判断能力が制限されている方が行動する時の危険を回避するために必要な介助・支援 |
重度障害者等包括支援 | 介護の必要性がとても高い方に居宅介護等の複数のサービスを包括的に行う |
障害者の介護でよく知られているのは、生活介護などの施設系サービスです。
訪問系は、障害のあるお子さんを持つ親御さんでも「そういうことができるのか知らなかった」というケースが多々あります。
障害福祉サービスのケアマネである「相談支援専門員」ができたのが2012年ですが、相談支援専門員の数は未だに不足していて家族のみで福祉サービスを組み立てている方はたくさんいます。
それによって障害福祉サービス(訪問系)のサービスがあまり知られていないという側面もあります。
障害者の介護は、とてもやりがいのある仕事です。
障害を持つ方が住み慣れた地域で自分らしく暮らしていくためには、社会とのギャップを埋めていかなければいけません。
当たり前のように福祉サービスを利用し、なおかつ近所のおばちゃんが気軽に手を差し伸べられる社会が理想だと筆者は思います。
障害者の介護に携わって20年になりますが、まだまだ心のバリアフリーとはかけ離れていると痛感しています。
筆者は障害者の介護という仕事を通して、「自分らしく生きる」という当たり前のことが当たり前にできる地域づくりを目指しています。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事を含む「障害福祉サービス第一部~第三部」があなたの役に立てたら嬉しいです。
では、また!
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