介護過程の全体像と目的をわかりやすく解説!初心者向けガイド

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この記事でわかること
  • 介護過程の目的と意義
  • 介護過程の全体像
  • 介護過程の実践に必要なスキル

介護の現場で働いている人の中には、介護過程を知らない人も多いと思います。

介護職の専門性を裏付ける重要なスキルとして注目されている介護過程。

これからも介護の仕事を続けていく上で、今や介護過程の展開ができることが必須のスキルになっています。

また、介護福祉士の試験にも出題される科目にもなっており、介護職員初任者研修のカリキュラムにも組み込まれるほど必要なスキルとして認知されています。

  • 「介護の仕事をしているけれど、介護過程が何なのかよく分からない…」
  • 「介護過程というのを最近知ったんだけど、今さら聞けない。」

という方は、ぜひこの記事を最後までご覧ください。

この記事の信頼性
  • 介護業界20年、現役の居宅介護事業所管理者 兼 相談支援専門員が執筆。
  • 持っている資格:ホームヘルパー2級、介護福祉士、ケアマネジャー、相談支援専門員
  • 介護業界で面接を担当した人数は150名以上
  • 介護業界で転職を3回経験
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介護過程とは?その目的と意義を解説

介護過程とは?を簡潔に言うと以下の通りです。

介護過程とは?

人間として当たり前の日常生活を送るうえでの生活課題(生活上の困難、支障、本人の望む生活が実現できていないなど)を解決するための科学的思考と実践のプロセス

介護過程は、介護実践の根拠(エビデンス)となるものであり、利用者の生活支援において個別ケアの方向性や具体的な介
護方法を示すものです。

また、利用者がひとりの人間として、自分らしく日常生活を営むための支援方法を探求する過程でもあります。

介護職は介護サービスを提供するプロですから、その場の思いつきでサービスを行うのではなく、目的や根拠を持って科学的にサービスを実施しなければなりません。

そして介護過程の目的と意義は、次の通りです。

介護過程の目的と意義

利用者が望む生活を実現する上で生じている生活課題を解決することで、QOLを向上させること。

利用者が望む生活を実現するために課題をひとつひとつ解決に導きQOLの向上を目指すのが、介護過程なのです。

では続いて、介護過程の全体像を理解していきましょう。

介護過程の全体像

介護過程の全体像がわかりやすいように、構成要素を解説していきます。

介護過程の構成要素
  1. アセスメント
  2. 介護計画(支援計画)の立案
  3. サービスの実施
  4. 評価

上記①~④をPDCAサイクルのように繰り返します。

4つのプロセスを改善しながら繰り返すことで、より質の高いサービスを提供できるようにしていきましょう。

①アセスメント

アセスメントとは、「人やものごとを客観的に評価・分析する」という意味です。

アセスメントの意味合いは業界によって様々な解釈があります。

福祉業界の場合は、利用者やご家族との面談や聞き取りなどから、心身の状態や日常生活の状況といった情報を収集することです。

情報収集の目的は、「利用者が直面している課題を把握・分析し、どのようなサービスが必要なのか、何を望まれているのかを明確にすること」です。

介護過程のサイクルを繰り返しながら、アセスメントからも潜在的なニーズを発見していこう!

アセスメントでの情報収集と分析の次は、計画を立案していきましょう。

②介護計画(支援計画)の立案

介護計画(支援計画)とは、アセスメントで把握した利用者のニーズや特性に合わせて、支援目標や支援内容が書かれたものです。

どのような必要性があって、どういった目標で、どんなサービスを行うのか?を具体的にわかりやすく表現する必要があります。

立てた計画をもとにサービスを実施するだけでなく、複数のサービスを利用している場合など他事業所と支援目標を共有したり支援方針を参考にする目的にも利用できます。

介護計画(支援計画)はどうやって作ればいいの?>>>【居宅介護管理者が教える】個別支援計画書の書き方完全ガイド

計画を立案したら、次はサービスを実施していきましょう。

③サービスの実施

介護計画(支援計画)のプログラムに基づいて、サービスを提供します。

サービスを実施する際には、常に計画の内容を意識した行動を心がけましょう。

計画に沿ったサービスを淡々と提供するのではなく、サービスを担当する職員自身が「なぜこのケアが必要か」といった明確な根拠を持つことが大切です。

サービス実施後には、きちんと計画に沿ってサービスが実施されているかのチェックや、評価につなげるための記録を書きましょう。

実施記録は評価につながるような書式になっていることが大切!

④評価

最後は評価です。

評価では、まずは計画で設定されている目標に対して達成状況を確認します。

サービスの実施記録や本人、関係者の意見をもとに確認していきましょう。

目標達成に至らなかった場合や、課題・問題点が発見された場合などには計画を見直します。

実施過程で別の視点からの意見や新たな情報を入手した場合、それも加味して修正しましょう。

評価はしっかりと会議などで行う仕組みになっていることが大切!

ここでの評価をもとに、次のサイクルの再アセスメントにつなげていきます。

介護過程の実践に必要なスキル

介護過程を実践するためには、「介護過程についての知識」「実践するための技術」が必要です。

それぞれについて、詳しく解説していきましょう。

介護過程についての知識

まず介護過程を理解するためには、介護系の資格取得や講座を受講することが有効です。

キャリアアップの道筋である介護福祉士の試験にも介護過程の科目がありますし、その受験に先立って受講する実務者研修のカリキュラムにも組み込まれています。

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このように知識は講座を受講することで簡単に習得できますが、技術はどうでしょうか?

介護過程を実践するための技術

介護過程を実践するために必要な技術は、いくつかあります。

介護過程の実践に必要な技術
  • コミュニケーション技術
  • 文章力
  • 論理的思考力
  • 課題発見力

それぞれどういった場面で必要になるのか、解説していきましょう。

コミュニケーション技術

コミュニケーション技術は、介護過程の一連の流れの全てにおいて必要です。

アセスメントでは、利用者やご家族とのコミュニケーションによって情報を収集しますし、計画の立案では介護職同士や他職種とも意見交換が必要です。

サービス実施の場面ではさらに高度なコミュニケーション技術が必要ですし、評価の段階においても計画の立案同様に意見交換が必要になります。

コミュニケーション技術は介護職の専門性のひとつであり、それと同時に社会人として最も大切なスキルといってもいいでしょう。

※関連記事>>>介護職に求められるコミュニケーション能力

文章力

介護職に文章力が必要と言っている人は少ないと思います。

なぜかそれほど重要視されていませんが、筆者の20年の経験から文章力は必須のスキルと断言できます。

「文章力」を辞書で引くと「文章を書く力」と載っていますが、ここでは「伝えたい内容をわかりやすく簡潔に書く力」と定義します。

では文章力は、どんな場面で必要なのでしょうか?

文章力が必要な場面
  • 介護計画(支援計画)の作成
  • 介護記録(支援記録)・サービス実施記録の記載
  • ご家族との連絡ツール(連絡帳など)の記載
  • 職員向けの文書の作成

上記の場面で、わかりやすく簡潔な文章を書くことが求められます。

介護の仕事で文章を書くことは意外に多く、役職が上がるにつれて頻度が高くなります。

では、わかりやすく簡潔な文章を書くためにはどのようなことに注意すればよいのでしょうか?

次の5つのポイントを押さえておきましょう。

わかりやすく簡潔な文章を書く5つのポイント
  • 誰もが理解しやすい言葉を使う
  • 一文を短くする
  • 主語と述語を適切に使う
  • 伝えたいことが明確
  • 具体的な表現を使う

これら5つのポイントに注意して書くことができれば、誰もがスッキリ理解できる文章を書くことができます。

文章力が高いと、しっかり伝わること以外にも「他者からの信頼を得やすい」というメリットもあるため、日頃から文章を書く際にはポイントを押さえるようにしましょう。

論理的思考力

介護過程に必要な論理的思考力を、リクナビNEXTさんの記事を引用して解説します。

論理的思考力(ロジカルシンキング)とは、物事を体系的に捉え、筋道を立てて考える力のこと。さらにかみ砕くと、相手と共通の物差しで、共通の道筋を作っていくことで、立場や専門性、置かれた環境が異なる相手と、頭の中の景色合わせをする能力を指します。

引用元:リクナビNEXT「論理的思考力」

介護過程では、ひとりの利用者について他職種とも連携して進めていく必要があります。

その際には、それぞれの職種からの専門的な意見もとりまとめて共通の物差しで道筋を立てていかなければなりません。

もし論理的思考力に欠けていたら、計画の立案さえも困難になるでしょう。

論理的思考力が欠如していたために、介護職からの見解しか反映されていない計画書を筆者は幾度となく見たことがあります。

そうなると、利用者のQOLを向上できるサービスを展開することは難しくなるでしょう。

課題発見力

課題発見力とは、「現状を把握・分析し、問題を見つけていく力」です。

課題を解決することが目的ではありますが、そもそも課題を発見できなければ仕方ありません。

大切なことは、まだ表面化していないけれどこれから発生する可能性がある潜在的な課題を発見することです。

潜在的な課題を発見することで、これから起こる問題を未然に防ぎ利用者のQOLの低下を回避できるでしょう。

そのためには、思い込みや前提をゼロにして考える思考が必要です。これをゼロベース思考といいます。

ゼロベース思考のポイント
前提を疑う

私たちは、例えば2つの選択肢を提示されるとついその2つの中から選択してしまいます。「そもそもこれ以外の選択肢があるのではないか?」と考えられることが大切です。

目的に戻る

あれこれと考えたり議論をしていると、つい本来の課題、論点からずれていくことがあります。論点のずれに気づき、目的を見失わないようにしましょう。

全体を把握する

今行われていることが全体のどの部分なのか、それぞれの要素とのつながりを意識して捉えることが大事です。

人間は、ついつい自分の経験や、今までの延長線上で物事をとらえてしまう癖があります。

日常を日常と捉えずに、「何か問題があるはず」「このままいくと、将来何か起こるはず」と考えるようにしてみてくださいね。

介護過程とは?まとめ

本記事では、

  • 介護過程とは?その目的と意義
  • 介護過程の全体像
  • 介護過程の実践に必要なスキル

を解説しました。

最後に内容を簡単にまとめましょう。

介護過程とは?

人間として当たり前の日常生活を送るうえでの生活課題(生活上の困難、支障、本人の望む生活が実現できていないなど)を解決するための科学的思考と実践のプロセス

介護サービスを行うプロとして、その場の思いつきではなく目的や根拠をもってサービスを提供しましょう。

介護過程の目的と意義

利用者が望む生活を実現する上で生じている生活課題を解決することで、QOLを向上させること。

利用者が望む生活を実現するために課題をひとつひとつ解決に導きQOLの向上を目指すのが、介護過程です。

介護過程の全体像(構成要素)
  1. アセスメント
  2. 介護計画(支援計画)の立案
  3. サービスの実施
  4. 評価

上記①~④をPDCAサイクルのように繰り返します。

4つのプロセスを改善しながら繰り返すことで、より質の高いサービスを提供できるようにしていきましょう。

介護過程の実践に必要なスキル

多くの介護職は、目の前に困っている人がいれば助けるような「情」や「良心」のある人たちです。

その中には、そういった「情」や「良心」があれば充分と考える人もいるでしょう。

しかし、そういった「情」や「良心」だけでは介護の専門職とは言えません。

利用者の情報と、それに対する分析をもとに目標をもって介護サービスを行っていくこと。

これが「介護過程」であり、行う介護サービスの根拠となるのです。


最後までご覧いただきありがとうございました。

本記事が、介護の専門職としてレベルアップする一助になれば幸いです。

では、また!

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この記事を書いた人

高齢者デイサービス、高齢者訪問介護を経て障害福祉業界に20年携わっています。
現在は、居宅介護の管理者 兼 相談支援専門員として活躍しています。
資格は介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネージャー)、相談支援専門員を所有しています。
介護業界に身を置いている経験から、現役介護職に向けて情報を発信しています。

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